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　アメリカでは上位１％の富裕者の資産は下位９５％の国民のそれに匹敵すると言われる。いま日本が巻き込まれているグローバライゼーション追随の社会はまさにその二の舞になる。
　貧富格差の拡大は社会全体の活力と連帯感を損ない、不安定さを増幅する。犯罪の温床ともなり、物騒な社会を生み出す。アメリカ社会はその見本であり、日本でもその兆候はすでに顕著に現れつつある。環境汚染、青少年犯罪の増加・凶悪化、教育現場の崩壊、過労死、中高年の自殺、農村崩壊、企業不祥事・・・・多くの日本人は何かがおかしいと思っている。

　アメリカのグローバル戦略に追随するだけの小泉構造改革によって生まれる日本社会は貧富二極化の社会であり､日本政府は強者と弱者が共存し、国民の多くが豊かさを実感できる国の実現を目指しているとは言い難い。
　自民党の抵抗勢力に与するつもりはないが、行過ぎた自由競争、野放図な規制緩和や民営化の推進は、日本の経済構造をガタガタにし、金が金を生み利が利を生むだけの社会を是とする価値観を作ってしまう。　
　そういう意味では既に問題になっているがＷＴＯ（世界貿易機関）のあり方についても問い直されなければならない。

　全世界の人類・国民の願いは、真面目に誠実に働き努力すれば報われる社会であり、それ相応の豊かさが享受できる社会である。しかし､いま世界中を席巻しているマネー資本主義はそんな真摯な願いをあざ笑うかのように実物経済とは遊離し、国家の枠を越えて暗躍する無謀な投機と金融勢力の世界であり、非道徳的行為をも厭わないマネーの暴力以外の何ものでもない。「人間の魂」を失った拝金主義の世界である。
　
　これが資本主義原理だなどと無責任なことを言わず「人間の幸せのための経済とは何か、どうあらねばならないのか」を我々は問わねばならない。資本が暴走して人間を不幸にする社会を形成するのを手をこまねいて見るのでなく、これを是正修正することを考えるのが人間の知恵であり叡智である。経済学の歴史は一貫してそのことを問い続け探求し続ける歴史ではなかったのか。

　重ねて言うと、ジャングルやサバンナの野獣社会と人間社会が異なるのは唯一この一点のみであり、これが出来ない人間社会は野獣の世界になり下がる。
　
　アメリカ型経済社会・マネー資本主義には、人間の人間らしい顔が見えない。見えるのは金の顔だけである。
　｢経済に従属させられる人間｣であってはならない。あくまでも｢人間のための経済｣でなければならない。

　
　日本が今やるべき事は現在のグローバライゼーションの行き過ぎに歯止めをかけ、アメリカの不条理な要求には断固「ＮＯ｣の意思表示をすることである。摩擦は覚悟すべきであり、避けてはならない。
そしてかつて日本社会を支えてきた伝統的な文化や商習慣、経営理念や経営手法を全て葬り去るのではなく、学ぶべきは学び、改めるべきは改めて、日本が目指すべき社会の姿を明確にし、新しい資本主義市場経済のあり方を追求することである。いまその正念場を迎えている。ビッグバン受け入れの失敗を教訓として生かし、間違ってもアメリカのような経済大国を目指す愚は避けなければならない｡

　バブル崩壊から１０年以上経っても明日の日本が見えてこない、少なくとも国民がそう思っているのは国の方向性が誤っているからだということを日本政府は認識すべきである。そして１０年以上も国民の努力が徒労に終わった失敗の原因は何だったのかをきっちり反省総括することから始めなければならない。グローバライゼーションは世界経済の潮流であり、日本の現状はそれに対応し乗り切るための過渡期の苦しみというような無責任な認識では失敗の原因は何も見えてこない。バブル崩壊後１０年余り国家運営の舵取りの何が間違っていたのかを具体的に反省し教訓として生かし、２１世紀の日本が目指す社会像・国家像に向って大きく方向転換することを国民に明示してもらいたい。

　９月には自民党総裁選が取りざたされている。こんなことをはっきり国民に訴える候補者が一人でも立ち上がって、熱い国民的論議を呼び起こしてもらいたいものである。

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