ROOM 2 　身辺随想

　今回から｢琵琶湖の桜並木｣も二年目に入る｡ホームページこの一年を一言で言うといろんな人々にヒントを貰いながら元気を貰いながら､支えられ励まされてきた一年だったと言える｡
　それだけに当初予期しなかった世界が拡がり、改めて旧交を温め深めるきっかけ作りになったことは、何物にも替えがたい宝物を再発見した思いである｡

草津市三大神社のフジ

　有り難いことにつたないホームページを毎月更新の都度ご覧頂いている方々､時々思い出したようにご覧頂く方々､ご覧頂く度に感想､意見､コメント等ご丁寧なメッセージを定期便のようにＥメールして下さる方々等多彩である｡そんなご来訪者の中から２～３方について御礼旁々ご紹介をしてみたい｡

　Ｙさん、元の職場仲間でホームページの先行開設者｡私の現役時代からＨＰへの強いインパクトを与え続け、「琵琶湖の桜並木｣はこの人のＨＰ｢賀茂川の風にさそわれて～♪｣がお手本｡一年前の開設時の激励から始まり毎月送られてくる博学と文才に満ちたユニークな発想やコメントは｢桜並木」の元肥であり追肥となっている｡サイバー文化の世界をリードする一人である｡

近江富士緑化公園のバラ

　Ｈさん、同じ会社だが職場は全く異なった大学の後輩。若いながらも苦労人で独自の人生哲学や宗教哲学を持ち、万葉集に日本人の心の原点を見るという風流で博学の朋友｡共に旧師範学校出の父を共通項に持ち前回の学校教育問題については目を見張るような意見を主張された｡私の視点を拡げるのに得難いヒントを提供してくれる｡

　Ｚさん、大学の同期同窓､クラブ活動も共にした親友｡社会人としては私と全く別の道を歩んだ国際的ファンドマネージャー。住まいも首都圏であるが距離を乗り越えた心の絆が続いている｡時々日本語より得意な英語で広い視野からの感想をメールしてくれる｡奥様ともども毎月見ていただき特に花の写真に評価と注文を付けて頂くのが嬉しい｡

近江富士緑化公園のバラ

　他にも会社の先輩OBや後輩､娘の親友(宝塚バージョン)などからも不定期に頂ける心のこもったメッセージがあり大きな励みになっている｡

　身内では家内と息子の嫁が継続購読者であるが､肝心の娘と息子の反応は今一つである｡孫達が成人した頃に、昔｢琵琶湖の桜並木｣という爺が書き残したものとして読んでくれることを目標にしたいと思っている｡　

宇治三室戸寺のアジサイ

　尚､12集までのうちで第7集の｢宝塚歌劇｣については意外だったという人が多いが実は現在かなりはまり込んでいる｡日頃娘には厳しいご指導を頂いているが、どうやら私には女性の顔を覚える才能が恐ろしく欠落しているようだ｡舞台化粧されるとみんな同じに見える (尤も各組毎のトップクラス 4～5人は解るが)。

　それでも娘との対話の共通話題でもあるし､私にとって心の清涼剤のようなもので楽しく爽やかで豊かな気持ちになれる｡これからも末永い楽しみの一つとして更にはまってみたいと思っている｡

宇治三室戸寺のアジサイ

　さて六月になり菖蒲の花が咲く頃になると私と家内にとっては生涯忘れ難い思い出が蘇る｡息子の幼児期における心臓手術である｡
　生後 3ｹ月で心室中核欠損症 (左心室と右心室を仕切る壁に穴があいており動脈血､静脈血が入り混じる)であることが判明した｡原因は不明､あらゆる”つて”を頼って病状の把握と治療法の相談に奔走した｡ 30年前の話である｡　

夕照庭園の菖蒲

　
　専門医の診断はこうである。穴は比較的小さいので放っておいても､そのまま塞がることもあり得る｡しかし塞がらなかった場合､大人になってからの心臓手術は成功の可能性は極めて低い｡またそれまでに運動制限等も必要になるだろうし､何歳まで生きられるかは症状により不明である｡

　手術をして成功すれば健康人と全く変わりなくなり、何の後遺症も何の不安も残らない｡手術時期としては心臓の生命力が最も強い幼児期が最も良い｡成功率は 60％程度 (約30年後の現在ではほぼ100％）ということであった｡
　

　これには私も決断することが出来なかった｡手術をしなければ、たとえ10年か 20年か知らないが間違いなく生きる｡しかし 20歳頃になってもし症状が思わしくない事態になった時に何故小さい頃に手術しておかなかったのかと私は自分自身をどう責め､息子にどう詫びたらよいのか。だが･･･手術をして失敗すれば即、死である｡

　考えれば考えるほど相談すればするほど「手術する」という決断はつきにくかった｡楽天家の家内も流石に泣き明かすことが多かった｡

石山寺菖蒲園

　息子はそんなことも知らず､何事もないかのように比較的元気に順調に成長した｡三歳になってもこれと言った支障は特に発生しなかった。しかし穴は塞がらなかった｡
　やがて四歳になった頃、私は幼稚園の年長時期 (六歳)になれば大津赤十字病院の心臓外科専門医の先生にすべてを託して手術することを決断した｡

　手術内容のことは今回は触れない｡ただ息子を朝８時頃手術室に送り出してから、手術終了後集中治療室で始めて親の面会が許されたのは夜の10時を過ぎていた｡
　我が人生で最も長い一日であった｡その夜､心電図の波が一度平坦になるという事態もあったが手術は見事に成功した｡そして幼い子供の生命力､回復力は流石に素晴らしく一ｹ月を待たずに退院した｡　　

石山寺菖蒲園

夕照庭園の菖蒲

　この手術の一週間前、私と家内が互いに気持ちを鎮めたかったのであろう京都平安神宮に息子を連れてお祈りすると共に、裏の庭園に見事に咲いた菖蒲の花を何話すでもなくじっと眺めていたものである｡この時の写真を見ると家内は今でも目を潤ませる｡

　手術後の発育は素晴らしかった｡こんな昔のことなど何もなかったかのように息子はサッカー選手をやり､体格は私をはるかに凌ぎ強健そのものになった｡学生時代は腕白坊主でならした｡今は仕事の傍らスキーのインストラクターもやっているようだ｡
　改めて大津日赤の執刀医､主治医はじめ医師団､看護婦の皆さま並びに多量の献血を頂いた皆さまに心からの感謝を申し上げる次第である｡　